中部大学

中部大学工学部 ロボット理工学科教授(工学博士)
藤吉 弘亘
〒487-8501 愛知県春日井市松本町1200 
入学センター TEL:0568-51-5541

AIの思考回路を見える化
ロボットの行動を理解する

 自動運転や介護ロボットの研究は、いま実用化の段階に進んでいます。AIを搭載したロボットが自身の経験から学ぶ強化学習によって、その認識力と判断力は飛躍的に向上していますが、一点大きな問題があります。それは、ロボットが何を根拠に行動を決めているのかが利用者にはわからないということです。何を考えどう行動するかわからない相手に、人は安心して身を委ねられません。当研究室ではこの問題を解決するために、AIの識別領域を強調して可視化する「アテンションマップ」を開発しました。アテンションマップは、AIが何に注目してどんな判断をしているのかを視覚的に伝えます。この情報をさらに言語に変換して音声出力すれば、画面を注視していなくてもロボットの挙動を把握できるようになります。
 また、アテンションマップを利用して、人もまたAIの学習強化に貢献します。AIが誤動作した際の識別領域を確認し、不足していた学習データを追加したり、専門家の知識や経験をAIに組み込むことで、AIの信頼性と性能をさらに高めることができます。人が安心してロボットと共生できるようになるためには、このような人とAIが相互に働きかける技術が不可欠だと私たちは考えています。
 当研究室では、この技術を2018年に発表し、2019年の画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2019) でフロンティア賞を受賞しました。また、企業や他大学と連携してロボットの知能化に関する競技会に参加し、2017年の「Amazon Robotics Challenge(ARC)」でStow task部門第3位および日本ロボット学会特別賞、2018年のNEDO「World Robot Summit」で陳列廃棄タスク第2位(1位と同点)、2019年の「CARLA AD Challenge」でTrack4部門第3位、2020年の「オフロード画像のセグメンテーションチャレンジ」で認識精度部門第1位と、好成績を収めています。技術の詳細については、YoutubeのWebオープンキャンパス等でもご紹介しています。興味を持たれた方はぜひ一度ご覧になってみてください。

国立大学法人豊橋技術科学大学

人間・ロボット共生リサーチセンター センター長
岡田 美智男
〒441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1 
TEL:0532-47-0111(代表)

人とつながり行動と幸福感を引き出す
「弱いロボット」

 私たちを取り囲むテクノロジーは目まぐるしい進歩を続けており、生活はますます便利になっています。しかし便利であることは必ずしも良いことばかりではありません。「してもらう」生活に慣れると、人は感謝よりも不満や要求を募らせ、より多くの機能や便利さを求めるようになります。また「楽をする」生活は、身体機能を低下させてしまいます。当リサーチセンターではこの問題点に注目し、便利さではなく「ウェルビーイング(自らの能力が生かされ、生き生きした幸せな状態)」を志向したロボット研究を行っています。
 人が幸せを感じるためには、自分の力で成し遂げる「自律性」や「達成感」、自己を肯定する「有能感」、他者や社会との「つながり感」などが重要です。一方的に人に与えるのではなく、人と関係することで幸福感を醸成しようとするのが、私たちが提案する「弱いロボット」です。弱いロボットは不完結で、人の助けがなくては目的を果たせません。例えば「ゴミ箱ロボット」は自分ではゴミを拾えず、人とゴミの近くをうろうろしてゴミ拾いを促します。子どもを対象に実証実験を行うと、最初は不思議がっていた子どもたちが自らゴミを拾い入れ始めます。中には「空き缶はこっちのロボットに」と分別まで始める子どもも。ロボットと協同してゴミ拾いに参加することで、子どもたちは誇らしげで満足そうな表情を見せてくれます。ゴミ箱ロボットの他にも、アルコール消毒スプレーを持ってもじもじとすることで、人が手を差し出したくなる「アイ・ボーンズ」や、読み聞かせの途中に言葉を忘れることで、人が教えて助けたくなる「トーキング・ボーンズ」などを開発し、人の行動と幸福感を引き出すロボットの研究を進めています。
 弱いロボットの考え方は私たちの教育方針にも反映されており、知見のすべてを示さずにあえて考える余地を残すことで、学生の思考力や発想力を引き出しています。時にはこちらが気付かなかった意外なアイデアが生まれることもあります。「弱い教師」として学生たちとともに研究を進め、人とロボットの幸せな関係づくりを目指しています。

国立大学法人名古屋大学

工学部・工学研究科 准教授 小川 浩平
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 
(代表)TEL:052-789-5111

ロボットの研究を通じて人を知る

 現在、ロボットやAIの研究が隆盛を極めており、これらのニュースを日々耳にしていると思います。その中で、私は人と対話するロボット、特に人に酷似した見かけを持つ「対話アンドロイド」の研究を通じて、「人とは何か」を探求する研究を行っています。AIやロボットの能力が人に近づいていくことに対して、何かしらの恐怖を感じたことがあると思います。その理由は、「不気味の谷」という名前で知られている、人でないにもかかわらず、人のように振る舞う人工物に対して、人は生得的に忌避感を感じる現象が存在するからです。実は、この忌避感が発生するメカニズムを明らかにすることが、人や自分自身をより深く知るための重要な要素であると考えられています。そのため、私は人に近い見かけを持つが、人とは違う存在であるアンドロイドを用いる事で、より深い人や対話の本質的理解を推進しています。ロボットの研究は、工学、心理学、社会学、さらには哲学を含む広範囲な知識が必要とされる、真に領域横断研究であると考えます。

ロボットと共存する社会を目指して

 人をより深く知るためのロボット研究を推進することは、人とロボットが日常生活のなかで共存するために必要な技術や知見を得ることにつながると考えています。なぜなら、私は、真に解くべき、知るべき問題は、研究室の机の上ではなく、日常生活の中にあると信じているからです。そのため、私はできるだけロボットを研究室の外に連れ出し、ロボットが実用的な存在として活用できるかどうかを検証しています。例えば、デパートで服を売る、受付で人を案内するといった、日常業務や、歌を歌う、演劇をする、指揮をする、仏像になってみる、など、数多くの具体的な環境にロボットを設置し、ロボットが実用的な存在として人間社会に受け入れられるかを検証しています。また、それを通じて、社会的に人間を理解する試みを実施しています。

国立大学法人名古屋工業大学

電気・機械工学科 助教
上村 知也
電気・機械工学科 特任助教
湯川 光
〒466-8555 名古屋市昭和区御器所町 企画広報課
TEL:052-735-5647

自然な動きを実現する歩行・走行ロボット

 電気・機械工学科のロボティクスラボ(佐野・上村研究室)では、歩行・走行運動を原理から理解し、2足・4足ロボットでヒトや動物に近い自然な動きを実現するという研究を行っています。原理に基づいてロボットを開発することで、将来的には生物を超えた究極の歩行・走行が実現できると信じています。研究室では私たち教員と学生が毎日活発にアイデアを出しあい、議論を重ねています。試行錯誤したロボットが予想を超えてうまく歩いたときの感動は他に代えられません。研究で得られた知見はリハビリなどにも応用可能で、研究成果を通して社会貢献できることも魅力です。

触覚が人と人をつなぐ

 電気・機械工学科のHaptics Lab.( 田中・湯川研究室)では、触覚の記録・伝達技術を開発し、人の生活へ応用しています。例えば、手を失った方が使う電動義手に触覚を付与し、使用感や操作性の向上に取り組んでいます。また、現在参画しているJST ムーンショット型研究開発事業では、ロボット技術を活用してアバターロボットを複数人が同時に操作することで、個人がもつ技能の融合に挑戦しています。触覚によって他者や機械、ロボットがつながり、身体的・物理的な制約を超えて自身の能力を発揮できる社会は、私自身も待ち遠しい未来です。

豊かな未来づくりを担う技術者・研究者の育成

 名古屋工業大学では、3Dプリンタなどの最新設備を整え、アイデアをすぐに形にして、様々なチャレンジができる環境を用意しています。また、電気・機械工学科の女子学生推薦や創造工学教育課程(6年一貫)・基幹工学教育課程(夜間主)の学生の募集など多様な学びの場を提供しています。企業との共同研究が多いのも本学の特徴で、研究成果と実社会の繋がりを感じることができると思います。

これ

南山大学

南山大学理工学部 機械システム工学科教授博士(工学)
稲垣 伸吉
〒466-8673 名古屋市昭和区山里町18 広報・募金課
TEL:052-832-3113

がれきを乗り越えて進む
多脚移動ロボットの歩行制御

 昨今におけるロボットの歩行制御研究は2脚または4脚歩行が主流ですが、これらは工場や病院など整備された場所での利用を前提としており、がれきが散乱している被災地などでは安定した歩行は難しくなります。私の研究室では、あえて2脚・4脚ロボットではなく、被災地での利用を前提とした6脚以上の多脚移動ロボットの基礎研究を行っています。
 多脚移動ロボットの歩行制御には、一つ目の足を置いた接地点に次の足を置き、そこにまた次の足を置くという動作を繰り返しながら進む「接地点追従法」と名付けた独自の制御技術を適用しています。これは、猫やムカデなどの動物の歩行の仕組みを解明した「Follow-the-leader footplacement strategy」の理論を参考にしたもので、一見複雑に見える多脚歩行を比較的シンプルに制御することができます。さらに胴体に搭載した姿勢センサによる歩行時のバランス制御、カメラと深度センサの組み合わせによる進行方向の凹凸検知、デッドロックによる歩行不能を回避する脚のタイミング調整制御等の機能を加え、不整地における歩行制御技術の向上に取り組んでいます。現在、昆虫と同じ左右対称型の6脚ロボットに加え、瞬時に方向転換が可能な全方位型の6脚移動ロボットを設計し、シミュレーションおよび試作機による検証を行っています。接地点の選択についてはまだ人的操作が必要ですが、将来的にはロボットが自身で接地点を選択する完全な自律制御を目指しています。
 当理工学部は2021年4月に改組し、より学びと研究に適した学科編成になりました。民間企業との実機共同開発にも着手しており、私がかつて勤務していた名古屋大学との共同研究も進めています。研究のトレンドは常に変化しています。今後また6脚以上の多脚移動ロボットが注目される時代がやってくることを期待しつつ、本研究によって災害対策に寄与していきたいと考えています。

国立大学法人三重大学

三重大学大学院
工学研究科機械工学専攻
教授 矢野 賢一
〒514-8507 三重県津市栗真町屋町1577
TEL:059-232-1211

健康長寿社会を実現する
自立支援型福祉ロボットの開発

 現在日本は、人口の約3割が65歳以上の高齢者である世界一の超高齢社会です。2030年には、少子化がさらに進むとともに、支援が必要な年齢層の人口が大幅に増加し、世界でもこれまで経験のない超高齢社会を迎えます。その問題を解決する手段として、医療福祉分野におけるロボット・AI・IoT技術の実用化が期待されています。
 三重大学知能ロボティクス研究室では、医工連携を積極的に進めながら、人間と機械の共生を実現するヒューマンセントリック(人間中心)なロボット制御技術を開発し、超高齢化時代を乗り超えるための自立支援型福祉ロボット技術の確立を目指しています。具体的には、機能回復を実現する装着型歩行訓練ロボット、高齢者に対応したロボット義足、認知症患者の転倒を防止する見守り支援機器、機能回復を実現する移乗支援ロボット、手足に障害を持つ方の操作インターフェースなどを行っています。

世界で勝負できる品質と機能を実現する
ものづくり支援技術の開発

 現在世界では、大きな産業の変化が起こっています。日本の競争力維持・強化のために、ロボット・AI・IoT技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)や温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルをスピーディーに進めていくことが求められています。
 三重大学知能ロボティクス研究室では、産学連携の共同研究に力を入れ、研究室独自の技術である流体挙動最適化技術をものづくりの基盤技術である素形材製造プロセスの最適化に展開し、世界で勝負できる品質と機能を実現するものづくり支援技術の確立を目指しています。さらには、大型プラントの脱炭素技術の開発、生産システムのDX技術の開発、危険かつ悪環境での極限作業を行う自律移動ロボットの開発、作業員の負荷軽減を実現する重量物運搬支援ロボット、労働災害の防止を実現するウェアラブル型作業支援ロボットの開発なども行っています。

三重大学の取り組み

 三重大学では、人と自然の調和・共生の中で、地域に根ざし世界に誇れる独自性豊かな教育・研究成果を生み出し、三重の力を世界へ発信することを基本的な理念と目的としています。その実現のために、本学ではこれまで、379名の研究者により構成される三重大学リサーチセンターを設立し、本学独自の特色ある研究領域に対して、世界水準の研究を推進してきました。さらには、『世界に誇れる環境先進大学』を築き上げることを目指し、地球環境に調和した社会の実現に向け、地球温暖化防止や省エネのための科学技術の実現や社会システムの創出を推進しています。

>三重大学 知能ロボティクス研究室のHPはこちら

名城大学

理工学部メカトロニクス工学科 教授 大原 賢一
〒468-8502 名古屋市天白区塩釜口1-501 渉外部広報課
TEL:052-838-2006

人と共存する環境で活躍する
ロボットシステムの開発を目指して

 名城大学理工学部メカトロニクス工学科では、機械、電気、情報を幅広く学び、演習・実験を通じて学びを深め、日本のものづくりをリードする人材の育成を目指しています。
 ロボットシステムデザイン研究室(大原研究室)では、機械、電気、情報を組み合わせたシステムであるロボットを対象として、特に人と共存する環境で活躍するロボットシステムの開発を目指しています。人と共存する環境で人を支援するロボットは、工場で働くロボットと異なり、ロボットにとって複雑な環境において、周囲の環境や人、さらには作業対象を理解し、適切な制御のもとで与えられた指示を達成しなくてはいけません。このような「賢い」ロボットを実現するためには、多くの技術を融合し、適切に組み合わせてシステムを構築していく必要があります。当研究室では、こうした「適切に機能を組み合わせてシステムを構築する」技術として、ロボット用ソフトウェアフレームワークとしてのミドルウェア技術やその応用を中心に研究を進めており、実用化を目指し、レストランでの給仕や、コンビニエンスストアやスーパーへの導入を目指した商品の陳列作業を行うシステムの開発を進めてきています。現在は(国研)科学技術振興機構が推進するムーンショット型研究開発制度のもとで、AIとロボットを融合し、人を支える賢いロボットの開発を支援するソフトウェアフレームワークの開発に取り組んでいます。
 このように当研究室では、機械・電気・情報といった幅広い学びを活かしながら、近い将来に、様々な場面でロボットが活躍する社会の実現に向けて、その基盤となる技術に関する研究開発を進めています。